代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~

運命の恋

「……はい。私こそ、すみません。従姉妹の一華ちゃんの代理で参加してたんです。騙すようにしてしまい、本当にすみません」

 硬い表情と声になってしまったが、素直に肯定した。

 謝る言葉も続ける。

 なのに玖苑はまったく怒る表情になんてならなかった。

 それどころか頬がさらに緩む。

 七海の目には、なんだか嬉しげな表情にも見えた。

「そんなふうに言わないでください。その点はお互い様です」

 それで優しいことを言ってくれる。

 七海の張り詰めていた気持ちは、少し緩んだ。

 確かにその通りだ。

 素直にそう言ってくれる玖苑が、とても優しい人であるだけだ。

 でもお礼を言おうとした七海の言葉は、出てこなかった。

 玖苑がやわらかな表情で、穏やかに続けたから。

「ずっと本当の名前で呼びたかったんです」

 話す玖苑は、笑顔……いや、愛おしげな表情であった。

 七海の心臓が、とくんと跳ねてしまう。

 こんな表情を向けられたことも、言われたこともない。

 胸が高鳴り、ゆっくり熱くなってくる。
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