代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 一年半前といったら、七海は新卒で就職してから、ほんの半年しか経っていなかった時期だ。

 当時はまだ、仕事にやっと馴染めてきたものの、それでも余裕が出るとまではいかなかった。

 だから上司に応接室へ連れられて、「こちらの会社に提供させていただいたよ」と紹介されたことは覚えていても、その場に玖苑が同席していたことまでは、意識に残っていなかった。

「確かにそういうことがありました。覚えておらず、すみません」

 違う意味で申し訳なくなって、謝った。

 あのとき、内心あたふたしながら挨拶して、何人かの来客と話した。

 その一人が玖苑だったのだ。

 自分がまだまだ新米で、余裕がゼロだったのを露呈してしまったようなもので、恥ずかしく思う。

「いえ、新入社員さんはそういうものですよ。それに、放送の音声はとても完成度が高かったと思いました」

 だが玖苑はやんわりと七海の言葉を否定した。

 おまけに別の点を褒めてくれる。

 仕事面を評価してくれる言葉に、七海の胸は、またどきんと高鳴った。
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