代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
「落ち着いている話し方なのに、しっかり内容は聞き取れて、穏やかな響きで……。社内放送にはぴったりだと思いました。サンプルを聞かせていただいて、すぐお借りしようと決めたくらいです」

 その上、もっと強い褒め言葉をくれるものだから、七海はもはやくすぐったくなった。

 玖苑はさらに話を続ける。

「それ以来、俺は社内で毎日あのアナウンスを耳にしていました。そして思いました。この方と直接また会話ができたら、とても優しい気持ちになれるだろうな、と」

 話は彼の気持ちに焦点が当たった内容になる。

 七海の胸は、快く高鳴った。

 自分の担当した仕事を、これほど好意的に捉えていてくれた人がいるなんて。

 自分の一部である、声と喋りも褒めてくれた。

 それだけでも嬉しすぎるのに、その相手は、この短い間の中でも、素敵だと感じていた玖苑なのだ。

「お見合いのときは喋り方を従姉妹さんに寄せていたと思うのですが、それでもどこか聞き覚えのある感覚がしました。それで『もしや』と思って、帰ってから、調べてみたのです。七海さんの現在と、おうちのご事情などを。勝手にすみません」

 玖苑はそんな内容で、この一連の事情についての説明を終えた。

 最後に少し申し訳なさそうに、謝る言葉までついてきた。

 本当に丁寧な人である。

 だが七海が気にしたのは、勝手に調べられていたことではなかった。
 
 すべて理解したし、腑に落ちて、小さく頷く。

 そういう事情なら、玖苑が自分に興味を持ってくれても自然だった。
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