代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
『こちらこそありがとう』

 返事としてたったそれだけ打つのすら、ドキドキを抱えてしまったのを思い出して、今の七海はくすぐったい気持ちになった。

『早速だけど、週末に会わない? 七海に会いたいな。今度こそ、お互い、本当の自分として過ごしたいんだ』

 そして玖苑のこの提案には、一人の自室で赤くなってしまった。

 もちろん『喜んで』と返事をして……今週の日曜日はデートをする予定である。

(ああ……デートってどうしたらいいのかな? なにを着ていけばいいんだろ。玖苑さんはどういう格好が好きかなぁ)

 昨日のやり取りから、現在へ思考が戻ってきた七海は、次の嬉しい悩みをぐるぐる考えることになった。

 もちろんかわいい格好をしていくのだ。

 服も、小物も、髪やメイクも……。

(持ってる服のどれかでいいのかな? それとも新しく買うべき? 間に合うのかな?)

 初めての交際なので、いまいちよくわからない。

 でも幸せな悩みなのだ。

 考えるのはくすぐったくも、楽しかった。

 しかしそこへ、不意にピロンッとスマホが音を立てた。

「ひゃ!?」

 考え込んでいたところだったので驚いて、七海は小さく声をあげてしまった。

(く、玖苑さんかな!?)

 おまけにとっさにそんな期待まで頭に浮かんで、自分の反応と思考に、さらに恥ずかしくなる。
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