代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 HEROというのは、主に舞台で大活躍している、一華の推し俳優だ。

 確かに「その彼のファンミーティングに当選した」と少し前、嬉しそうに話してきた。

 つまり打診された『お見合い』とのダブルブッキングはこれなのだ。

 仮にも娘の結婚に関わる話だというのに、一華のこの行動を両親は許すのだろうか、と七海は疑問に思った。

 だが一華はさらっと答える。

「うん、気乗りしないなら七海ちゃんに手伝ってもらって、流していいって。私のほうも、そのうち結婚話が出るかも、って話してるし」

「また『彼氏』って(てい)にしてるんだね……」

 七海は呆れた。

 一華は特に恋人がいるわけでもないのに、両親には『付き合っている相手がいる』ということにしているのだ。

 別に『推し俳優と交際している』なんて嘘は言っていないが、イベントなどに行くときは、親に「彼氏とデートなの」という名目を使うのである。

 そして一華の両親も、一華の姉で長女の令華が数年前に、無事結婚となったので、次女の一華のことは、割合放任気味であるともいえた。

 このように、一華があまりに必死なので、七海は心を決めた。

(仕方ない、会うだけだから。確実に話がまとまるわけでもないし、私も彼氏とかいないし……)
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