代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 七海のそれに、玖苑は苦笑混じりで軽く笑った。

「いや、一華さんの推しについてだもんね。わかってるよ」

 理解あることを言ってくれるので、七海はちょっとだけ安堵した。

 玖苑は優しい捉え方をしてくれるだけではなく、こうして自分のことも安心させてくれる人である。

「でも昨日、プロモーション映像を見てたときも同じだったよ。七海の視線が兄に向いてて、ちょっと嫉妬したかな」

 でもそれでは済まなかった。

 追い打ちをかけるように言われるので、七海は一気に頬が熱くなってしまう。

 嫉妬した、なんて、それほど自分に想いを寄せてくれるからこそではないか。

「本当は、ほかの男をこれから見てほしくないくらいだ。こうして……」

 その七海に対して、玖苑はふわっと笑った。

 そうして腕を伸ばす。

 昨日と同じように、七海の体をそっと腕の中へくるんだ。

 七海の心臓は昨日と同じく跳ねてしまったし、鼓動も一気に速くなった。

「俺の腕の中だけに、いてくれたらいいのにな」

 七海の髪にそっと触れて、軽く撫でる玖苑は、明らかに愛おしげな響きでそう呟く。

 そこまで強く想われて、七海の胸は、緊張以上に、熱い幸せでいっぱいになった。
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