代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~
 よって七海が切り出そうとしたときだった。

「お待たせ、七海」

 そこへコンコン、とノックがあり、玖苑が入ってきた。

 黒いスーツ姿の彼は、いつも通りのやわらかな笑みを浮かべている。

「玖苑さん! 今日はありがとう」

 七海の顔も、パッと明るくなった。

 立ち上がって挨拶をする。

 隣では一華も、手にしていたスマホをテーブルに伏せて置いて、席を立った。

「初めまして。七海ちゃんの従姉妹の、大平 一華と申します」

 丁寧にお辞儀をした一華に、玖苑は優しい笑みを向けた。

「一華さん。俺と七海を結び付けてくれたことに、ずっとお礼を言いたかったんです。今日はお会いできて光栄です」

 軽くお辞儀をしてから、玖苑はそんなふうに言う。

 一華が嬉しそうに笑顔になった。

「いえいえ! 私こそご挨拶できて嬉し……」

 明るく言いかけたのだが……そこでコンコンッと忙しないノックの音がした。

 振り返った玖苑が「はい」と答えると、ドアから一人の男性が入ってくる。

「遅くなった! 悪い、玖苑」

 ちょっと焦った様子で言った彼は、ネイビーのスーツを着ている。

 黒髪で、前髪を下ろしたスタイルだ。

 そしてその顔立ちは、玖苑とかなり似たもので……。

 七海は一瞬で察した。

「え、もしかしてお兄さ……」
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