代理お見合いに出席したら、運命の恋が始まりました~社長令息は初心な彼女を溺愛したい~

偽りのお見合い

「いやぁ、とても素敵なお嬢様だ。華道のアシスタントをされているとは……美しいだけでなく、お仕事にも熱心でいらっしゃるのだな」

 歴史あるホテルの一室に設けたお見合い会場では、和やかに話が進んだ。

 八尋の隣に座る父親が、頷きながら七海を褒めてくれる。

「いえ、勿体ないことでございます」

 七海は少々、気が引けつつ、曖昧に肯定した。

「光栄です」

 隣に座った両親……七海の両親ではなく、一華の両親、七海にとってはおじとおば……その二人も穏やかにお礼を言っていた。

 話をする間、七海はもちろん、一華になり切ったつもりで振る舞った。

 職業も趣味も、一華のことならよく知っている。

 それをそのまま話すだけで良かった。

 さすがに『イケメン俳優の大ファン』というのは黙っておいたが。

 最初にこんな趣味を打ち明けたら、受け取る相手によっては、一華の評価が落ちる可能性があるからだ。

 あとはどちらかというと物静かなほうである自分の素の状態ではなく、明るく、はきはきした一華の話し方も真似(まね)た。

 それらはまるで疑われることなく、小太りな体格を英国風のスーツに包んだ父親のほうも、七海を気に入ってくれたようだった。

「ええ、とても素敵なお方ですね」

 八尋も父親に同意する。

 七海はほっとした。

 今日のこの場は形だけのものとはいえ、波風立てずに終わらせるのが最大の目標なのだから、上手くいっているわけだ。
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