訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
 ……家族勢揃いよりは気が楽かも。お父様だけなら食事マナーもそれほど気にしなくていいし。

残念どころかラッキーと万歳している内心を包み隠し、私は森本さんへ向かってにっこり微笑んで頷いた。

襖を開けて中へ入ると、森のような心地よさを感じる畳の香りが鼻を掠める。

庭が一望できる見晴らしの良い和室には、父が座布団の上に胡座をかいて座り、私を待ち構えていた。

私もテーブルを挟んで向かい側の座布団の上に着席する。


「亜湖、久しぶりだな。元気そうだ。全然連絡を寄越さないから心配してるのだぞ。特に最近、海外はなにかと物騒だ。お前が危険な目に遭っていないか気が気ではない」

「お父様、安心してください。私は大丈夫です。仕事で海外に行く時も宿泊先はセキュリティの高いところを会社が手配してくれますし、早々危険なことはありませんから」

「だがなぁ、心配は心配だ」

御年63歳となる父にとって、私は遅くにできた末っ子だ。

いつまでたっても子供のような感覚が抜けないのか、会うたびに過度に心配される。

厳しく躾けられたものの、虐げられたわけではなく、家族関係は普通に良好だ。

森本さんが運んで来てくれた、和食のフルコースとも言える昼食を囲んで、私は父と和やかに言葉を交わす。

父は母や兄姉の近況についてや、最近リフォームしたらしいご自慢の書斎について、楽しそうに話してくれる。

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