訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
私は即座に自分自身にツッコミを入れ、続いて正直にそのまま「いない」と答えるか、嘘をつくかを検討し始める。

 ……嘘をついたら、じゃあ連れて来いって言われそうだもんなぁ。

想像するだけで非常に面倒そうだ。

しかももし詳しく身辺調査でもされれば、一発で嘘がバレてしまうだろう。

それならば、事実をそのまま伝える方がリスクは低い。

 ……仕事が大事ってことを強調して、それとなくお見合い回避するのがきっと最善!

よしっと心の中で喝を入れると、私はにこやかな笑顔で父へ答えた。

「そういう相手はいません。仕事が楽しいので」

「相手がいないなら、見合いをする気はないか? お前に合いそうな候補が何人かいるが……」

案の定、ここで父の口から“お見合い”というワードが飛び出した。

私は改めてここが正念場だと気合いを入れ直して威厳漂う父を見据える。

「でもお父様が上げる候補の方って、政治家の妻とか、社長夫人とか、今の仕事を辞めて家に入ってくれるような女性をご希望ですよね? お姉様のように」

「う~む、確かにそうだな」

「私は結婚しても今の仕事を続けさせてくれる人がいいなぁって思ってるんです。なのでお見合いは遠慮させてもらいます」

「分かった。亜湖の気持ちは理解した。今候補に上がっている者達は断っておくとしよう」

 ……よっしゃぁ! 完全勝利~!

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