訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
早々に1冊読み終えてしまった私は、ぜひ2冊目を読みたいと思い、要さんに一言断りを入れてから本を取りに書斎へ向かった。

 ……次はどの小説にしようかなぁ。

本棚を前にあれこれ検討する。

前に観た映画の原作『涙に隠れた夜』も読んでみたいし、はたまたまだメディア化されていない作品も捨てがたい。

結局、『涙に隠れた夜』に決めて、本棚に手を伸ばす。

だが、その小説は上の方の棚にあり、つま先立ちをしてもなかなか手が届かない。

しばらく1人で悪戦苦闘していたところ、ふいに後ろから頭上に手が伸びてきた。

「どれ取りたいの?」

「……あの1番右にある『涙に隠れた夜』です」

驚いて振り返ると、そこには要さんがいて、私に代わってひょいとお目当ての本を取ってくれた。

「はい、これ」

「ありがとうございます」

本を手渡される時、なんとなくお互いの視線が絡んだ。

そして一瞬時が止まったかのように無言で見つめ合う。

 ……ちょっと待って。なんかドキドキするんだけど……!

高い所にある本を取る時、まるで背後から抱きしめられるような感覚に陥った。

しかも耳元近くで聞こえる声の破壊力たるや。

腰にズンときて、思わずへにゃへにゃと座り込んでしまいそうになった。

 ……家、ヤバイ! いつもより要さんがリラックスしてるからか色気ダダ漏れ!

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