訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
目指すは自宅のある品川、そしてあの喫茶店だ。

エアポート急行なら品川まで22分くらいの距離である。

喫茶店にも30分程で到着できる見込みだ。

たかだかあと数十分のことなのに、どうにも気が急いてしまう。

ちなみに羽田空港をベースとするCAは、空港からほど近い、京急沿線のエリアに住んでいる人が多い。

もちろん私もそのうちの1人だ。

ただ、私の場合は、職場からできるだけ距離をとりたかったため、その中でも空港から少し遠い品川を選んだ。

職場から近すぎるとプライベートでも仕事関係者と顔を合わせる可能性が高い。

それが私は嫌だった。

周囲の目を気にして外面を作っている私にとっては苦痛でしかない。

実家から離れて1人暮らしをしているため、もう必要以上に取り繕わなくていいと頭では分かっているものの、幼少期から積み重ねてきたこの仮面は、もう私にとって呼吸をするのと同じくらい当たり前のことだ。

習慣とは実に恐ろしいと心底思う。

 ……でも万が一、『グチグチノート』を仕事関係者の人に見られたら、その仮面が剥がれちゃうよね!?

そんな事態になれば、仕事がやりにくくなるのは必至だ。

絶対に阻止しなければ。

私は電車の中でもソワソワしながら、今か今かと品川到着を待ち侘びた。

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