訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
デレデレを通り越して超絶いやらしい顔をした菅野さんに、テーブルの上に置いていた手を突然握られたのだ。

しかも誘うように私の手の甲を指でスリスリしてきた。

ブワッと全身に鳥肌が立ち、顔が引き攣る。

 ……キモイ! キモすぎるッ!

ここまでなんとか持ち前の忍耐力で外面を作ってきたが、もう限界だった。

お見合いを断るならば帰ってから父を通して対応すべきだし、お見合い途中で席を立つのはマナー違反だと頭では分かっている。

でも、もはやそんなのどうだっていい。

父の顔に泥を塗ってしまうかもしれないが、これ以上は本当に無理だ。

手を振り払ってこの場から立ち去ってしまおうと私が思い立ったその時。


――トントントン


突然個室の扉をノックする音がその場に響いた。

勢いを(くじ)かれてしまった私は動きを止める。

そのままの状態で振り向き、扉に向かって「はい」と短く返答した。

てっきり仲居さんがお会計を持って来てくれたのだろうと思っていたのだが、現れたのは店員さんではなかった。

背が高く、引き締まった体の、眼鏡をかけた極上イケメンだった。

あまりにも見慣れた人物の姿に私は目を見開く。


 ……要さん!? なんでここに!?


驚きすぎて声も出せずに固まっていると、要さんは個室に入ってきて、椅子に座る私のすぐ傍へと歩み寄ってきた。

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