訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
スマホをテーブルの上に置いた要さんは、素早く腰を屈めると、私の頬に手を添えて口づけを落とした。

しかも息する暇もないような、舌で口内を蹂躙する濃厚なキスだ。

「んぅ、ん」

唾液が絡むような水音と、私のくぐもった声が辺りに響く。

頭の芯がぼーっとしてきたところで、ようやく要さんの顔が離れた。

「あーー可愛い! なにその顔。必死に声を抑えてる亜湖ちゃんの姿もめちゃくちゃ可愛いかったけど、今のその顔もたまらない。ごめん亜湖ちゃん、話は後にしていい?」

「後? 今話すんじゃ―――……」

「そんな可愛い表情で俺を煽った亜湖ちゃんが悪いから責任とってね? ほら、あっち行こう。それともここでがいい?」

そんな理不尽とも言える理由で、要さんは私を椅子からひょいと抱き上げる。

「好きだよ、亜湖ちゃん」

極め付けに、チョコレートにも負けないとびきり甘い低音ボイスで囁かれたら、もうお手上げだ。

私は朝から極上イケメンに思う存分貪られたのだった。


◇◇◇


「……メッセージのやりとりの時も思いましたけど、要さんって恋人には激甘なんですね」


ルームサービスを注文した私達は、着替えを済ませてテーブルで遅めの昼食を食べていた。

朝から予定外に乱された私の声はやや掠れ気味である。

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