訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
この時になって、私はなんとなく嫌な予感を覚え始めた。

今までの経験上、要さんはとんでもないことをいきなりサラッと告げる時があるのだ。

そしてその予感は案の定だった。


「亜湖ちゃんって“好き”とか“可愛い”とか俺が言うと、めちゃくちゃ可愛い顔するんだよね。言葉で好意をストレートに伝えられるの弱いでしょ? いつものビシバシ言う感じが鳴りを潜めて、ちょっと困った表情するのがたまらないなぁと思って。それでもっと言いたくなってくるから、どんどん言動がエスカレートしてるのかも」

「………!!」

要さんが楽しそうな表情で紡いだ言葉に私は絶句した。

 ……イヤーっ! なんか色々バレてる!

昨日の時点で私が恥ずかしくて“好き”と言えないことは露呈していたが、言われるのにもタジタジしている現状が完全に把握されている。

だからこんなにやたらめったら甘い言動なのかと納得がいった。

「……女心に鈍いくせに、こういう時だけ鋭いなんてズルイです」

「本気で好きな女性が相手なら、俺でも鋭くなれるんだね。これも初めて知ったよ。それに一般的な女心はもうどうでもいいかな。俺が理解したいのは亜湖ちゃんの心だけだから」

 ……もう、本当ダメ! 甘すぎる……!


とろりとした蜂蜜の如く甘い言葉に、心をズキュンと撃ち抜かれ、私は胸に手を当てて思わずテーブルの上に突っ伏してしまった。

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