訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
「スイートに連れ込まれそうになってたんだよね? 手まで握られてたし。本当に間に合って良かった。実は直前まで新作の執筆をしてて、なんとか書き上げた直後だったんだよ」

要さんによると、原稿の提出締切が昨日だったらしく、お見合いを潰しに行くためには、それまでになんとしてでも書き上げる必要があったらしい。

坂田さん経由で私のお見合いを知ってからは、昼夜問わず必死で執筆に励んでいたそうだ。

なんとかギリギリに書き終わってメールで坂田さんに送った後、急いでシャワーを浴びてあの場に現れたという。

そんな話を聞くと、私のために頑張ってくれたんだと伝わってきて胸がキュンと甘くときめいた。

「俺はこうして亜湖ちゃんと気持ちを確認し合えたし、お見合いを潰したことに全く後悔はないよ。ただ、今さらだけど、亜湖ちゃんの方は大丈夫?」

「えっ? どういう意味ですか?」

私が人知れずしみじみと甘美な気持ちに浸っていると、要さんがふいに心配を宿した声音で突然不思議なことを口にした。

その真意が分からず、私は首を傾げる。

すると続いて要さんの口からは、私の盲点をつく一言が発せられた。

「ほら、お見合いって親がセッティングしたものだから。亜湖ちゃんの親御さんが怒ってるんじゃないかと思って」

「あっ!」

指摘されたと同時に忘れていた事実を即座に思い出して、私は頓狂な叫び声を上げた。

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