訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
通話状態になるやいなや、父からは矢継ぎ早に質問が飛び出す。

ダーッと一方的に投げ掛けられる言葉を一旦受け止め、私は一呼吸おいてから、まずは事実を端的に説明し始めた。

「お父様、心配おかけして申し訳ありません。えっと、途中でお見合いの場から退席したのは事実です。ただ色々と事情がありまして」

「突然男が現れて亜湖を攫って行ったというのは事実か!?」

「……はい、概ね事実です。その方と今一緒にいるんですけど、実はお父様に挨拶に伺いたいとおっしゃっていて。ご都合つく日はありますか?」

「今すぐ家に来なさい」

「えっ、今すぐ? お父様、それは―――……」

さすがに急すぎるのではと言いかけていたところで、電話は一方的にブチッと切れた。

私は唖然としてスマホを見つめる。

「今すぐ来いって?」

「要さん、聞こえてたんですか?」

「あの声量だと音漏れするからね。近くにいれば尚更聞こえるよ。じゃあ早々に準備して亜湖ちゃんの実家へ伺おうか」

こんな唐突な展開だというのに要さんは相変わらず落ち着いていて、余裕すら感じさせる。

女心をレクチャーしていた恋愛コンサルの頃には感じられなかった頼もしさがあった。

 ……なにこれ、またギャップにキュンとしちゃった……!

本物の恋人になってからというものの、要さんの今まで知らなかった一面に幾度となく胸を掻き乱されている。

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