訳ありイケメンは棘持つ花に魅入られる
 ……要さんと出会って、素の自分を曝け出すことを知って、本当の好きがどういうものかを初めて理解したからかな。

素の心で向き合う恋は、想像以上に居心地が良くて、蕩けそうに甘くて、悶えるほどくすぐったくて。

これを知ってしまった今、取り繕った外面で政略結婚の相手と上手く付き合う自信は皆無だ。


「なるほど。亜湖は政略結婚を厭っていたのか」

「はい」

「だが亜湖、お前はそもそも勘違いしているぞ。わしは別に政略結婚を強要するつもりはない」

「へ……?」

ひと通り自分の意思を伝え終え、緊張から身を硬くしていた私は、返ってきた父の言葉に思わず間抜けな声を漏らした。

予想外の台詞にパチパチと瞬きが止まらない。

「今回の見合いも、わしは事前に付き合っている相手の有無を確認しただろう? もし恋人がいれば見合いなんぞ勧めるつもりはなかった」

「そ、そうなんですか?」

「それにお前の兄も姉も別に政略結婚ではないぞ。なぁ母さん?」

「ええ、あれは恋愛結婚ですわね」

「えっ!?」

 ……ちょっと待って! どういうこと!?

前提がすべてひっくり返されたような衝撃に私は愕然とする。

顔を見合わせる父と母の様子を唖然と見つめた。

両親の説明によると、兄と姉は20代前半の頃、確かにお見合いは何度もしていたそうだ。

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