溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
胸の奥が、甘く跳ねた。
それがときめきなのか、警戒なのか、自分でもわからなかった。
買い物を終えて、紙袋を抱えて歩く帰り道。
わたしはその視線の意味を考えていた。
(わたしと手を繋ぎたかった、なんて言ってたけど……)
あのときの手の温度が、まだ掌に残っている。
春風が吹いて、並んだ影が舗道に長く伸びる。
「……あの、神城さん」
「ん?」
「今日、楽しかったです」
「僕もですよ」
短いやり取りなのに、不思議と心が軽くなる。
そのとき――
「……あれ?真白?」
振り向くと、少し離れたところに彩花が立っていた。
手には紙袋、どうやら買い物の帰りらしい。
彼女の視線が、一瞬だけ神城さんとわたしの間を行き来する。
「え、まさか……デート?もしかして、例の画家さん!?」
頬が一気に熱くなる。
「ち、違うよ! 今日は――デートじゃなくて……」
「でも、彼が画家さんっていうのは合ってるでしょ?イベントのポスター描いた人!」