溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
――“光を描かせてくれた”
(じゃあ、わたしも――“笑顔を作る”側で、ちゃんと応えなきゃ)
リビングのテーブルに置かれたエプロンを手に取る。
鏡の前で結び直しながら、心の中で小さく呟いた。
「よし。行こう」
外に出ると、朝の空気は少し冷たくて、それがかえって心地よかった。
今日の空は、雲ひとつなく晴れている。
(――煌、見ててね)
そう心の中で言いながら、わたしはイベント会場へと向かって歩き出した。
イベント会場の扉が開くと同時に、熱気と甘い香りが押し寄せた。
照明の光が天井の金属に反射し、ホール全体がきらきらと輝いている。
開場からわずか十分。
すでに有名店のブースには長蛇の列ができていた。
「さすがだな……」
小さく呟いて、自分のテーブルに視線を戻す。
テーブルクロスの上には、新作のケーキ《シトロン・ルミエール》。