溺れるほど甘い、でも狂った溺愛


「ちょ、やめて!篠原さんがいるのに!」

「だって、もう我慢しなくていいんでしょ?」

「も、もう……!」


篠原さんは呆れたように、それでもどこか楽しそうに笑った。


「はは……まさか神城さんがこんな顔するとは。いいことですね」


その言葉に、わたしの頬はさらに赤く染まる。


「……お願い、離して……」

「無理です。今は、無理」

「……!」


煌の声は低く甘く、どこか子供みたいにわがままだった。

篠原さんは立ち上がり、軽く咳払いをする。


「……そろそろ失礼します。邪魔をしたら怒られそうなので」

「え、あの、すみません!」


慌てて頭を下げると、篠原さんは笑って手を振った。


「いえいえ。むしろ安心しました。あの無表情な天才が、こんなふうに笑うようになるとは思いませんでしたよ」


扉が閉まる音がして、部屋に再び静けさが戻る。

わたしはまだ頬を染めたまま、煌の腕の中で小さくため息をついた。


「……もう、ほんとに恥ずかしい人」

「見られたって構わない……むしろ真白は僕のだって自慢したい」

「……子どもじゃないんだから」

「でも、嫌じゃないんでしょ?」


そう言って、また軽く頬にキスを落とした。


午後の光の中で、ふたりの笑い声が重なって、

アトリエの空気は、どこまでも穏やかに溶けていった。

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