溺れるほど甘い、でも狂った溺愛


並んで歩く道の上に、街灯の光が落ちる。

沈黙が続くのに、不思議と居心地の悪さはなかった。


「今日は来てくれて、嬉しかったです」

「……行ってよかったです。あんな素敵な絵、初めて見ました」

「そう言ってもらえると、報われます」


彼は静かに笑った。

その笑みを見て、胸の奥がふわりと温かくなる――


……その瞬間だった。


ふと、通りの向こうに灯る小さなショーウィンドウが目に入った。

新しいケーキ屋のようだ。


淡いクリーム色の外壁、ガラス越しに見えるショーケース。


「……あれ、いつの間にできたんだろう」


独り言のように呟いて、足を止めた。


けれど、次の瞬間。

目の奥が、一気に冷たくなる。


ガラスの向こう――

白い制服に身を包み、笑顔で客を見送る女性。


その顔を見た瞬間、息が止まった。


(……嘘……)


記憶の底に沈めていた、あの声、あの笑い方。

間違いない。

あの人だ。


――コンテストの時、私を陥れた。

あの“嫌がらせ”の中心にいた、あの人。


手の中がじっとりと汗ばみ、指先が震える。

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