溺れるほど甘い、でも狂った溺愛


低く呟いた声に、わたしは思わず瞬きを繰り返した。


(何を、見つけたって?)


けれど彼はすぐに微笑を浮かべ、一瞬にしてわたしの目の前に目を輝かせてやって来た。

その様子はまるで、大型犬が飼い主の姿を見つけて駆け寄って来るときと似ている。


「……おねーさん!ですよね!?あのときの!」

「……え?」


思わず体が固まった。


(おねーさん……?この人、わたしを知ってる……?でも記憶にない……)


「僕のことわかります!?わからないですよね……あのときは、中学生のガキンチョだったから……」

「あの……すみません。どこかでお会いしたでしょうか?」


わたしたちのやり取りを、ご夫婦が心配そうに見つめていた。

芙美子さんが心配そうに一歩踏み出しかけて、でも口を挟むのをためらっている。


どこかで会っているのだろうか。この男性に。


わたしは、必死に記憶の中を探し回った。

動揺を隠せずにしていると、彼は柔らかな笑みを浮かべた。

けれど、その奥に熱を孕んだ視線がある。

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