溺れるほど甘い、でも狂った溺愛
外に出ると、夜風が頬を撫でた。
さっきまでの部屋の温度が、まだ体の奥に残っている。
隣を歩く神城さんは、何も言わなかった。
けれど、その沈黙が――言葉よりも熱かった。
ふと横を見上げると、彼の視線は前を向いたまま、どこか遠くを見ていた。
まるで、わたしをこのまま“連れていく未来”を描いているように。
部屋に戻ると、時計の針が九時を少し過ぎていた。
外はすっかり暗く、窓の外の街灯が淡く光を落としている。
カーテンを閉める気にもなれず、靴を脱いだままベッドの端に腰を下ろした。
手のひらには、まだ神城さんの体温が残っている気がした。
(……“帰したくない”って)
その言葉が、静かに頭の中で反響する。
穏やかな声だったのに、拒めないほどの強さを帯びていた。
あのときの彼の瞳。
理性的なのに、どこか危うく光っていた。
ほんの少しでも触れたら、なにか取り返しのつかない場所へ落ちてしまいそうな――そんな予感。