秘書の想いは隠しきれない
「入社試験は忖度なく合格だよ。うちの歴史をあそこまで覚えてきてくれた子は初めてだし、筆記試験も問題なかった。面接の時の印象が強くて、すぐに花蓮さんのことは覚えた。廊下ですれ違うたびに耳まで赤くして、ずっとお辞儀をしてくれる子なんて、花蓮さんしかいなかったから。花蓮さんのことを意識し始めて、それで思い出したんだ、あの時、電車の中で出会ったのは花蓮さんだったって」
クスっと思い出すように社長は笑った。
「いつしか花蓮さんを見ることが俺の癒しになった。仕事が増えて、手伝ってくれる秘書がほしいと思っていた時に、思い浮んだのが花蓮さんだった。成績も業務態度も良くて、良い噂ばかりだったから。秘書に抜擢しやすかった」
そうだったんだ。
そう言えば、神木社長に対する耐性がついていない頃は顔を見るだけで緊張して、動けなくて、真っ赤になっていた気がする。
「秘書になってもらって、花蓮さんの仕事に対する姿勢とか、俺のことをわかってくれてるんだなって思うことが何度もあって。居心地が良かった。顔に出るほど意識してくれていたのに、一緒にいる時間が長くなることで、花蓮さんの気持ちがわからなくなった。俺のこと、まだ気に入ってくれているのかなって心配になって。それで……」
神木社長はスマホを取り出し、画面を私に見せた。
あれ、社長室が映っている。
映像に私が映り、<社長……>社長と呟いた私は社長のイスに座り、デスクにうつ伏せになって両手を伸ばしている。
これは、この前の私だ……!!
「ごめん。俺、花蓮さんに対する執着がすごくて。実は隠しカメラを社長室につけていたんだ。この映像見た時は、すごく嬉しかった。俺のことまだ好きでいてくれているんだなって。だから花蓮さんが早く出勤して、細かいところの掃除とかしてくれているのも知っていたよ。言えなかったけど」
私はどう捉えたらいいの。
「俺は花蓮さんのことが好きだ。だけどすぐに片付けられない問題があって、それに花蓮さんを巻き込みたくなかったから、今まで黙っていたけど。花蓮さんが居なくなったら、気持ちを我慢していた意味もなくなっちゃうから」
神木社長が私のことが好き!?
そんな夢みたいな話があるの。これは現実の世界?
流行りのタイムリープとか転生とかが私に起こっているんじゃ。
自分のことを抓ってみるけど、痛みはある。
私の行動を見て、社長はハハっと笑い
「花蓮さんは、俺のこと好き?」
首を傾げながら聞いてくれた。
「すすすすすきです。大好きです。憧れで、私のヒーローで、推しで。だけど好きになっちゃいけない人で……」
「じゃあ、両想いだね」
クスっと笑って社長は私を引き寄せ、抱きしめてくれた。
「あの、社長……?」
聞いてたかな。
好きになっちゃいけない人なのは、わかっているのに。
「どうして俺のことを好きになっちゃいけないの?もっともっと好きになって。俺、花蓮さんのこと誰にも渡したくない」
耳元で響く、甘えたような声。
「社長には恵梨香さんが……」
「ああ。花蓮さんを見るためにつけた防犯カメラが役に立ったよ。あいつら、社長室まで来てくれて助かった。あの時のこと、全部録音できてる。映像もしっかり残ってるから。ごめんね、本当はもっと早く花蓮さんのこと助けてあげたかったけど。別れる理由の証拠を集めたくて。昨日の花蓮さんの発言は全部見てたよ。俺、あんなに愛されてるんだって、感動しちゃった」
ええっ。じゃあ、私が恵梨香さんに言ったことも全部知っているんだ。恥ずかしい。
「顔、痛くない?カメラのこと伝えるのが怖くて、黙っていたけど」
社長は私の頬に軽く触れた。
「だだだ大丈夫ですっ!もう痛くないです」
引っ叩かれた時よりも、社長との至近距離が耐えられない。
「花蓮さんに帰らないでほしいって言わせたかったんだけど、言ってくれなかったから。玄関まで送りますってすぐに言われて寂しくなってさ。だから秘密の部屋、開けちゃった」
ドアノブにわざとカバンをひっかけたの?
どうして推し部屋の存在を……。
「前に社長室で花蓮さんのカバンが開いてたんだ。その時、チラッと中身が見えて。鏡に俺の写真が貼ってあったり、カバンの中に隠してるチラッと見えるキーホルダーにも俺の写真があったから。もしかしたら部屋にも俺の写真を飾ってくれているのかなって、賭けてみた。良かった、勘が当たって」
そこまで見られてたんだ。
「おかげでこうして安心して告白することができたよ」
にっこりと笑う彼は、社長じゃないみたい。
「花蓮さん、俺のこと信じてくれる?」
この顔、何かを考えている時の表情だ。
プランニングしている時とか、お客様の前でプレゼンテーションをする時の社長の顔。
「はい。信じます」
私は神木社長を信じるしかない。
クスっと思い出すように社長は笑った。
「いつしか花蓮さんを見ることが俺の癒しになった。仕事が増えて、手伝ってくれる秘書がほしいと思っていた時に、思い浮んだのが花蓮さんだった。成績も業務態度も良くて、良い噂ばかりだったから。秘書に抜擢しやすかった」
そうだったんだ。
そう言えば、神木社長に対する耐性がついていない頃は顔を見るだけで緊張して、動けなくて、真っ赤になっていた気がする。
「秘書になってもらって、花蓮さんの仕事に対する姿勢とか、俺のことをわかってくれてるんだなって思うことが何度もあって。居心地が良かった。顔に出るほど意識してくれていたのに、一緒にいる時間が長くなることで、花蓮さんの気持ちがわからなくなった。俺のこと、まだ気に入ってくれているのかなって心配になって。それで……」
神木社長はスマホを取り出し、画面を私に見せた。
あれ、社長室が映っている。
映像に私が映り、<社長……>社長と呟いた私は社長のイスに座り、デスクにうつ伏せになって両手を伸ばしている。
これは、この前の私だ……!!
「ごめん。俺、花蓮さんに対する執着がすごくて。実は隠しカメラを社長室につけていたんだ。この映像見た時は、すごく嬉しかった。俺のことまだ好きでいてくれているんだなって。だから花蓮さんが早く出勤して、細かいところの掃除とかしてくれているのも知っていたよ。言えなかったけど」
私はどう捉えたらいいの。
「俺は花蓮さんのことが好きだ。だけどすぐに片付けられない問題があって、それに花蓮さんを巻き込みたくなかったから、今まで黙っていたけど。花蓮さんが居なくなったら、気持ちを我慢していた意味もなくなっちゃうから」
神木社長が私のことが好き!?
そんな夢みたいな話があるの。これは現実の世界?
流行りのタイムリープとか転生とかが私に起こっているんじゃ。
自分のことを抓ってみるけど、痛みはある。
私の行動を見て、社長はハハっと笑い
「花蓮さんは、俺のこと好き?」
首を傾げながら聞いてくれた。
「すすすすすきです。大好きです。憧れで、私のヒーローで、推しで。だけど好きになっちゃいけない人で……」
「じゃあ、両想いだね」
クスっと笑って社長は私を引き寄せ、抱きしめてくれた。
「あの、社長……?」
聞いてたかな。
好きになっちゃいけない人なのは、わかっているのに。
「どうして俺のことを好きになっちゃいけないの?もっともっと好きになって。俺、花蓮さんのこと誰にも渡したくない」
耳元で響く、甘えたような声。
「社長には恵梨香さんが……」
「ああ。花蓮さんを見るためにつけた防犯カメラが役に立ったよ。あいつら、社長室まで来てくれて助かった。あの時のこと、全部録音できてる。映像もしっかり残ってるから。ごめんね、本当はもっと早く花蓮さんのこと助けてあげたかったけど。別れる理由の証拠を集めたくて。昨日の花蓮さんの発言は全部見てたよ。俺、あんなに愛されてるんだって、感動しちゃった」
ええっ。じゃあ、私が恵梨香さんに言ったことも全部知っているんだ。恥ずかしい。
「顔、痛くない?カメラのこと伝えるのが怖くて、黙っていたけど」
社長は私の頬に軽く触れた。
「だだだ大丈夫ですっ!もう痛くないです」
引っ叩かれた時よりも、社長との至近距離が耐えられない。
「花蓮さんに帰らないでほしいって言わせたかったんだけど、言ってくれなかったから。玄関まで送りますってすぐに言われて寂しくなってさ。だから秘密の部屋、開けちゃった」
ドアノブにわざとカバンをひっかけたの?
どうして推し部屋の存在を……。
「前に社長室で花蓮さんのカバンが開いてたんだ。その時、チラッと中身が見えて。鏡に俺の写真が貼ってあったり、カバンの中に隠してるチラッと見えるキーホルダーにも俺の写真があったから。もしかしたら部屋にも俺の写真を飾ってくれているのかなって、賭けてみた。良かった、勘が当たって」
そこまで見られてたんだ。
「おかげでこうして安心して告白することができたよ」
にっこりと笑う彼は、社長じゃないみたい。
「花蓮さん、俺のこと信じてくれる?」
この顔、何かを考えている時の表情だ。
プランニングしている時とか、お客様の前でプレゼンテーションをする時の社長の顔。
「はい。信じます」
私は神木社長を信じるしかない。