乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
言葉の続きを待ったが、それ以上は話す気がないようで続かない。
どうしたものかと思っていると、シーンが突然切り替わった。次の好感度アップイベントだ。
月が明るく照らす、穏やかな夜だった。宿のバルコニーの手すりにカナエが静かに佇んでいる。酒場でさえ閉まった深夜の街は、ひっそりと眠りに落ちていて静かだった。カナエの視線の先は、モンスターを避けるためにぽつぽつと焚かれた松明の火に向いている。
「眠れないのかい?」
「……ミカ」
そっとバルコニーに続くドアから出て、彼女に声をかける。何度も繰り返したシーンだ。初回では驚いた顔をしていたカナエだったが、今では驚きもなく待っていたかのような顔をしている。
「冷えてしまうよ」
私は手に持っていたブランケットを、カナエの肩に被せる。そして、隣に並んで一緒に街並を眺めた。
「ありがとうございます。……へへへ、やっぱり好きだなあ、ミカ」
7周目に呼び名を変えて欲しいとお願いして以降、彼女は律儀に呼び名を変えてくれている。できれば敬語もやめてくれと伝えたが、それは断られてしまった。他国の第三王子とはいえ、王族であるカイル相手には気安く話しているのだから、私にだって敬語を外しても良いものを。
「いつも……ここに来てくれるから、毎回待っちゃうようになりました。凄く嬉しくて。……でも『イベント』なんだもんね、ミカが来たいからなんじゃなくて」
突然そんな事を言われて、言うべき言葉が判らなくなる。
本来なら、このイベントでは明日に控えた初めての中ボス戦に向け、ヒロインが気分の高まりから眠れずバルコニーに居るところへ、同じく眠れなかった攻略キャラクターが現れ、ヒロインと話す事で鼓舞され、ヒロインに対する好感度が高くなるイベントである。
間違っても、ヒロインがゲームに対する不安を述べるシーンではない。
どうしたものかと思っていると、シーンが突然切り替わった。次の好感度アップイベントだ。
月が明るく照らす、穏やかな夜だった。宿のバルコニーの手すりにカナエが静かに佇んでいる。酒場でさえ閉まった深夜の街は、ひっそりと眠りに落ちていて静かだった。カナエの視線の先は、モンスターを避けるためにぽつぽつと焚かれた松明の火に向いている。
「眠れないのかい?」
「……ミカ」
そっとバルコニーに続くドアから出て、彼女に声をかける。何度も繰り返したシーンだ。初回では驚いた顔をしていたカナエだったが、今では驚きもなく待っていたかのような顔をしている。
「冷えてしまうよ」
私は手に持っていたブランケットを、カナエの肩に被せる。そして、隣に並んで一緒に街並を眺めた。
「ありがとうございます。……へへへ、やっぱり好きだなあ、ミカ」
7周目に呼び名を変えて欲しいとお願いして以降、彼女は律儀に呼び名を変えてくれている。できれば敬語もやめてくれと伝えたが、それは断られてしまった。他国の第三王子とはいえ、王族であるカイル相手には気安く話しているのだから、私にだって敬語を外しても良いものを。
「いつも……ここに来てくれるから、毎回待っちゃうようになりました。凄く嬉しくて。……でも『イベント』なんだもんね、ミカが来たいからなんじゃなくて」
突然そんな事を言われて、言うべき言葉が判らなくなる。
本来なら、このイベントでは明日に控えた初めての中ボス戦に向け、ヒロインが気分の高まりから眠れずバルコニーに居るところへ、同じく眠れなかった攻略キャラクターが現れ、ヒロインと話す事で鼓舞され、ヒロインに対する好感度が高くなるイベントである。
間違っても、ヒロインがゲームに対する不安を述べるシーンではない。