乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
 呼び出した彼女は、約束の時間通りに東屋に来てくれた。

「――、愛している。私の愛を受け取ってくれるだろうか?」

「……また乙女ゲームごっこですか?」

「いいや? 私は本気だ」

「へへ、嬉しいな」

 彼女は目に涙を滲ませて、私に抱き着いてきた。それを抱きしめ返して、私は彼女にお願いをする。

「この戦いから無事に帰ったら、私と結婚してくれないか」

「死亡フラグ立てないでくださいよ」

 クスクスと笑う彼女に私は首を傾げたが、今はふざけているわけではない。

「返事は?」

「喜んで」

 彼女の答えに、私は抱きしめる力を強くした。そして、何があっても魔王を倒し、彼女を守り切ると、そう心に誓ったのだ。

 そう、誓ったのに、あっさりとそれは破られる。
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