乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
にやけ顔のカイルの背中をバチンと叩いて「恋人じゃない!」と照れ隠しをした回数は数えきれない。けれど、そういう風に言われてから、彼女は心の中でだけ、そっとミヒャエルのことを『ミカ』と呼ぶようになっていた。
旅が進むにつれ、そんな風に一緒に過ごしたミヒャエルを好きになったのは、当然のなりゆきだったろう。
召喚当初は、魔王さえ討伐すれば元の世界に帰れると思っていたが、もし討伐が終わったらすぐ元の世界に帰りたいと言い出すには躊躇うほどの情が、既に彼女の中には芽生えていた。それでも付き合ってもいない好きな人のために、元の世界を捨てて異世界で暮らすと宣言ができるほど、元の世界への未練が立ち切れた訳でもない。
それを察知していたのか、ミヒャエルもどんなに甘い言葉を囁いても、彼女に対して告白はしてこなかった。
だからこそ、彼女はミヒャエルからのプロポーズが嬉しかった。
第一王子の正妃など、苦労するに決まっている。創作の世界でしか見たことのない社交界は、さぞ気疲れするだろう。でもそんなこと、彼女にはどうでも良かった。
本音を絶対に言わなかったミヒャエルが、彼女に向き合って真摯に告白してくれた。その事実だけで、彼女をミヒャエルの隣でずっと歩もうと決心するには充分だった。
プロポーズを受け入れた後に、はにかんだ彼女はちょっとしたお願いをミヒャエルにする。
「あのね…ミカ、って呼んでいいですか?」
「なんだ、やっとそう呼んでくれるのか」
「えっ」
「隠れてずっとそう呼んでただろう?」
意地の悪そうな顔で笑うミヒャエルに、恥ずかしい思いで彼女は逃げ出したかった。
彼女の幸せな記憶はそこまでで、その次の記憶は魔王討伐の苦しい戦いの記憶だ。
「皆……頑張って……!」
後方で祈りながら、彼女は仲間たちの無事を祈る。その祈りは光となってミヒャエルやカイルの力になった。けれど、魔王の力は強大で、決着がなかなかつかなかった。
「っ危ない!」
旅が進むにつれ、そんな風に一緒に過ごしたミヒャエルを好きになったのは、当然のなりゆきだったろう。
召喚当初は、魔王さえ討伐すれば元の世界に帰れると思っていたが、もし討伐が終わったらすぐ元の世界に帰りたいと言い出すには躊躇うほどの情が、既に彼女の中には芽生えていた。それでも付き合ってもいない好きな人のために、元の世界を捨てて異世界で暮らすと宣言ができるほど、元の世界への未練が立ち切れた訳でもない。
それを察知していたのか、ミヒャエルもどんなに甘い言葉を囁いても、彼女に対して告白はしてこなかった。
だからこそ、彼女はミヒャエルからのプロポーズが嬉しかった。
第一王子の正妃など、苦労するに決まっている。創作の世界でしか見たことのない社交界は、さぞ気疲れするだろう。でもそんなこと、彼女にはどうでも良かった。
本音を絶対に言わなかったミヒャエルが、彼女に向き合って真摯に告白してくれた。その事実だけで、彼女をミヒャエルの隣でずっと歩もうと決心するには充分だった。
プロポーズを受け入れた後に、はにかんだ彼女はちょっとしたお願いをミヒャエルにする。
「あのね…ミカ、って呼んでいいですか?」
「なんだ、やっとそう呼んでくれるのか」
「えっ」
「隠れてずっとそう呼んでただろう?」
意地の悪そうな顔で笑うミヒャエルに、恥ずかしい思いで彼女は逃げ出したかった。
彼女の幸せな記憶はそこまでで、その次の記憶は魔王討伐の苦しい戦いの記憶だ。
「皆……頑張って……!」
後方で祈りながら、彼女は仲間たちの無事を祈る。その祈りは光となってミヒャエルやカイルの力になった。けれど、魔王の力は強大で、決着がなかなかつかなかった。
「っ危ない!」