乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
ゲームの【はじまり】
はじまりの
魔王は倒された。私たちが加えていた攻撃によるダメージと、彼女の祈りの光によって、魔王は滅んだ。喜ぶべきなのに、やっと、戦いが終わるというのに、私は目の前の光景が受け入れられない。
「ミカ、よか、った……」
呟いた彼女が、血を吐き倒れ伏した。その背中から伸びる、魔王の触手の欠片。灰になって消えゆく触手がつけた傷は、彼女の胸を貫通している。
「そんな」
知らず、手がわなわなと震えた。彼女を起こしたが、彼女は微かに唇を震わすだけで、何も言えない。ただ、口から血をこぼした。
「――っ!」
「――様!」
カイルたちが走り寄ってくる音が聞こえる。
「すぐ、すぐに回復の魔法をかけよう、だから、目を、閉じないでくれ」
彼女の手をとるが、震えているのは私なのか、彼女なのか判らない。 彼女は私の顔を見てくれていたが、やがて唇の動きも止まり、その目の光が消えた。
「嫌だ、起きてくれ」
まだ暖かいのに、彼女がもういないことが判ってしまう。
「――……死ぬな……っ!」
私が守れなかったばかりに、彼女を死なせた。彼女を守ると約束したのに、守れなかった。私が彼女を殺した。
もう一度チャンスがあるなら、彼女を死なせないのに。
私じゃなければ彼女を守れたのか?
強く彼女の身体を抱きしめるが、その腕が私を抱きしめ返してくれることはない。
何度も何度も彼女の名前を呼んで、涙が枯れた時、やっとおかしなことに気がついた。
「……カイル?」
カイルたちが、こちらに走り寄ってくる姿勢のまま、止まっている。いや、カイルたちだけではない。魔王が死んで崩壊が始まっている筈の魔王城の崩壊すら止まっている。
私以外の全ての時が、止まっていたのだ。
そんな周りの状況に気付いてようやく、自分の身体の変化にも気づいた。
魔力が沸きあがって、私の身体から周囲に向かって魔力を放出し続けている。
「これは……?」
私の魔力が、時間を止めていた。
ゆらゆらと漂う魔力が、周囲どころか、この世界そのものの時を止めている。
魔王は倒された。私たちが加えていた攻撃によるダメージと、彼女の祈りの光によって、魔王は滅んだ。喜ぶべきなのに、やっと、戦いが終わるというのに、私は目の前の光景が受け入れられない。
「ミカ、よか、った……」
呟いた彼女が、血を吐き倒れ伏した。その背中から伸びる、魔王の触手の欠片。灰になって消えゆく触手がつけた傷は、彼女の胸を貫通している。
「そんな」
知らず、手がわなわなと震えた。彼女を起こしたが、彼女は微かに唇を震わすだけで、何も言えない。ただ、口から血をこぼした。
「――っ!」
「――様!」
カイルたちが走り寄ってくる音が聞こえる。
「すぐ、すぐに回復の魔法をかけよう、だから、目を、閉じないでくれ」
彼女の手をとるが、震えているのは私なのか、彼女なのか判らない。 彼女は私の顔を見てくれていたが、やがて唇の動きも止まり、その目の光が消えた。
「嫌だ、起きてくれ」
まだ暖かいのに、彼女がもういないことが判ってしまう。
「――……死ぬな……っ!」
私が守れなかったばかりに、彼女を死なせた。彼女を守ると約束したのに、守れなかった。私が彼女を殺した。
もう一度チャンスがあるなら、彼女を死なせないのに。
私じゃなければ彼女を守れたのか?
強く彼女の身体を抱きしめるが、その腕が私を抱きしめ返してくれることはない。
何度も何度も彼女の名前を呼んで、涙が枯れた時、やっとおかしなことに気がついた。
「……カイル?」
カイルたちが、こちらに走り寄ってくる姿勢のまま、止まっている。いや、カイルたちだけではない。魔王が死んで崩壊が始まっている筈の魔王城の崩壊すら止まっている。
私以外の全ての時が、止まっていたのだ。
そんな周りの状況に気付いてようやく、自分の身体の変化にも気づいた。
魔力が沸きあがって、私の身体から周囲に向かって魔力を放出し続けている。
「これは……?」
私の魔力が、時間を止めていた。
ゆらゆらと漂う魔力が、周囲どころか、この世界そのものの時を止めている。