乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
それゆえ彼女は、楽観視することに決めた。
生きていることを楽しもうと。
ミヒャエルに出会うであろう未来は、カナエにとっては何度も夢見た親しい人だが、ミヒャエルにとっては初対面だ。最初はどんな言葉をかけようか、どうやって自己紹介しようか、何度も何度も考えた。
そうしてカナエはいつしか女子大生になり、ある朝玄関から出る直前に、アルデウムへと召喚された。
召喚された瞬間は、将来に死ぬかもしれない世界にやってきてしまった恐怖よりも、本当にミヒャエルに出会える世界に来た喜びの方が勝っていたのは、彼女の明るさゆえだろう。
「やったー!」
そう叫んでガッツポーズを取った彼女に対して、周囲の人間は異様な女を招いてしまったと思ったに違いない。
アルデウムへと召喚された後、カナエはほとんど記憶の通りの旅を続けた。けれど、決定的に違うことがあった。
ミヒャエルの口調や物腰が、おかしいのだ。
正確には、記憶の中のミヒャエルはカナエをからかったり、ぶっきらぼうな口調で接してきたりしていた。けれど、二度目のアルデウムの世界でのミヒャエルは、品行方正で甘く優しく物腰の柔らかな王子様だった。
乙女ゲームごっこどころではなく、ずっと乙女ゲームのヒーローのような物腰なのだ。
記憶との違いに戸惑いはしたが、ミヒャエルが好きなことには変わりなかった。
予想外だったのは、ミヒャエルの怪我が、とても恐ろしかったことだ。カナエをモンスターから庇って、大けがをした時は、彼女の頭は真っ白になった。
血まみれになって倒れ伏す姿は、魔王の触手に貫かれた彼の姿と重なって見えて、恐ろしかったのだ。死なせたくないという思いが、聖女の力を更に覚醒させたが、そんなことはカナエにとってどうでも良かった。ただただ、この先ミヒャエルが致命傷を負うかもしれないことが怖かったし、自分のために彼が傷つくのが嫌だった。
それからも旅は続き、プロポーズを受け、死亡フラグが立ったことを悟ったカナエは絶望した。死にたくなかったし、誰も死なせたくなかったから、戦いの最中は常に懸命に祈った。
生きていることを楽しもうと。
ミヒャエルに出会うであろう未来は、カナエにとっては何度も夢見た親しい人だが、ミヒャエルにとっては初対面だ。最初はどんな言葉をかけようか、どうやって自己紹介しようか、何度も何度も考えた。
そうしてカナエはいつしか女子大生になり、ある朝玄関から出る直前に、アルデウムへと召喚された。
召喚された瞬間は、将来に死ぬかもしれない世界にやってきてしまった恐怖よりも、本当にミヒャエルに出会える世界に来た喜びの方が勝っていたのは、彼女の明るさゆえだろう。
「やったー!」
そう叫んでガッツポーズを取った彼女に対して、周囲の人間は異様な女を招いてしまったと思ったに違いない。
アルデウムへと召喚された後、カナエはほとんど記憶の通りの旅を続けた。けれど、決定的に違うことがあった。
ミヒャエルの口調や物腰が、おかしいのだ。
正確には、記憶の中のミヒャエルはカナエをからかったり、ぶっきらぼうな口調で接してきたりしていた。けれど、二度目のアルデウムの世界でのミヒャエルは、品行方正で甘く優しく物腰の柔らかな王子様だった。
乙女ゲームごっこどころではなく、ずっと乙女ゲームのヒーローのような物腰なのだ。
記憶との違いに戸惑いはしたが、ミヒャエルが好きなことには変わりなかった。
予想外だったのは、ミヒャエルの怪我が、とても恐ろしかったことだ。カナエをモンスターから庇って、大けがをした時は、彼女の頭は真っ白になった。
血まみれになって倒れ伏す姿は、魔王の触手に貫かれた彼の姿と重なって見えて、恐ろしかったのだ。死なせたくないという思いが、聖女の力を更に覚醒させたが、そんなことはカナエにとってどうでも良かった。ただただ、この先ミヒャエルが致命傷を負うかもしれないことが怖かったし、自分のために彼が傷つくのが嫌だった。
それからも旅は続き、プロポーズを受け、死亡フラグが立ったことを悟ったカナエは絶望した。死にたくなかったし、誰も死なせたくなかったから、戦いの最中は常に懸命に祈った。