乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます

エピローグ

エピローグ

 ゲームのシステムが壊れ、世界があるべき姿に戻ってから半年が過ぎた。その間に冬を迎え、ようやく雪が融け始めたところだ。魔王が討伐された影響で、モンスターはなりを潜め、世界は平和になっているらしい。

 あれから周りの者の話を聞いた所、世界がゲームになっていたことに気付いていた人間は、ほとんどいなかった。多少記憶がぼんやりしている所もあるようだが、おおむね普通の人間のように生活をしていたらしい。

 だから、私の魔法がなくなっても、皆、普通通りに生活を続けていることが判り、安心した。

 国を守る筈の王族が、国どころか世界を作り変えて私物化していたなど、笑えもしない。

 私がしでかしてしまったことに関しては、一部の神官と国の上層部には明かしてある。世界に事実を公表をしていないのは、いたずらな混乱と争いの種を振りまかないためだ。

 時空魔法が存在すると判明すれば、今は魔力が枯渇している私ですら、奪い合いの対象となり戦争を巻き起こしかねない。

 保身のためとも捉えられかねないが、それが魔王との戦いが終わったばかりの世界には、一番安全な方法だと思われた。

 逆に、保身のためだけならば、私の胸だけにしまっておくこともできただろう。しかし、それをしなかったのは今後、同じことが二度と起こらないという確証はないからだ。

 今は枯渇していても、魔力は通常充分な休息で回復していく。流石に世界を変えうる魔法を使うだけの魔力を貯めるには時間がかかるだろうが、小さな時間の逆巻きを発生させないとも言えない。

 だから私は、高位の神官に事実を告げ、私の魔力を封じてもらったのだ。

「ミカ、また難しい顔してる」

 私の執務室に入ってきたカナエが、苦笑しながら紅茶を淹れてくれた。こういうことは本来侍女の仕事だが、私の気分転換にと時折こうしてカナエが淹れてくれるのだ。

「仕事をしていれば、こういう顔にもなる」

「それって、前に話してた手紙?」

 私の手元にある書類は、他国への協力要請の内容をしたためたものだ。

「ああ、この申請が通ればカナエは元の国に帰れる」

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