乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
彼女に近づこうと立ち上がると、カナエは涙をすぐに自分で拭って、手を伸ばした私の手を振り払った。
「私、一人で興奮して馬鹿みたい……」
そのまま部屋から出て行こうとする。
「待ってくれ!」
ドアを開けて逃げ出そうとしたのを、慌ててドアを閉めて阻止する。図らずもドアにカナエを押し付けて腕の中に閉じ込める形になってしまった。
「馬鹿なのは私だった」
カナエの頬を撫でると、彼女が私の顔を睨みつけてくる。
「帰りたいというから……私は、勘違いしたのだ」
「ミカのそばに帰ってこれないなら、私は元の世界に戻れなくていい」
「……お前の気持ちを疑った私が悪かった。お前がいいなら、ずっと私の隣に居て欲しい」
「それ、ゲームの台詞?」
「違う」
「だって前も『本気だ』って言ったじゃん」
「……ゲームだろうと、現実だろうと、カナエだけを愛している。これからもずっと、お前が傍に居て欲しい」
「もっとヒーローぽく言って」
虚を突かれてまじまじとカナエを見ると、もう怒った顔ではなく、からかうような表情を浮かべている。さっきまで泣いていたのに、もう悪戯をしているらしい。それに笑いそうになって、口を引き締める。
「悪いお姫様だね」
頬を撫でていた手を、彼女のあごに添えて上向かせる。
「どんな世界だろうと、私は君を愛しているよ。カナエ、私と一緒に居てくれるかい?」
「へへ。もちろん、任せて!」
色気のない彼女の返事を聞いて、私は彼女に口づける。
腕の中の彼女は、満足げに笑った。
中止にしていた婚礼の手配を、もう一度しよう。各国への協力要請は、挙式の招待状へ変更せねばなるまい。思えば、彼女の帰還を決めた時から塞いでいた気持ちが、急に晴れやかになったようだ。
その時春を告げる鳥のさえずりが外から聞こえてきた。
長い長い冬を越え、今度こそ私は乙女ゲームを終わらせることができたのかもしれない。いや、これからも彼女のヒーローであることは変わりない。カナエは、私の一生のヒロインなのだから。
「私、一人で興奮して馬鹿みたい……」
そのまま部屋から出て行こうとする。
「待ってくれ!」
ドアを開けて逃げ出そうとしたのを、慌ててドアを閉めて阻止する。図らずもドアにカナエを押し付けて腕の中に閉じ込める形になってしまった。
「馬鹿なのは私だった」
カナエの頬を撫でると、彼女が私の顔を睨みつけてくる。
「帰りたいというから……私は、勘違いしたのだ」
「ミカのそばに帰ってこれないなら、私は元の世界に戻れなくていい」
「……お前の気持ちを疑った私が悪かった。お前がいいなら、ずっと私の隣に居て欲しい」
「それ、ゲームの台詞?」
「違う」
「だって前も『本気だ』って言ったじゃん」
「……ゲームだろうと、現実だろうと、カナエだけを愛している。これからもずっと、お前が傍に居て欲しい」
「もっとヒーローぽく言って」
虚を突かれてまじまじとカナエを見ると、もう怒った顔ではなく、からかうような表情を浮かべている。さっきまで泣いていたのに、もう悪戯をしているらしい。それに笑いそうになって、口を引き締める。
「悪いお姫様だね」
頬を撫でていた手を、彼女のあごに添えて上向かせる。
「どんな世界だろうと、私は君を愛しているよ。カナエ、私と一緒に居てくれるかい?」
「へへ。もちろん、任せて!」
色気のない彼女の返事を聞いて、私は彼女に口づける。
腕の中の彼女は、満足げに笑った。
中止にしていた婚礼の手配を、もう一度しよう。各国への協力要請は、挙式の招待状へ変更せねばなるまい。思えば、彼女の帰還を決めた時から塞いでいた気持ちが、急に晴れやかになったようだ。
その時春を告げる鳥のさえずりが外から聞こえてきた。
長い長い冬を越え、今度こそ私は乙女ゲームを終わらせることができたのかもしれない。いや、これからも彼女のヒーローであることは変わりない。カナエは、私の一生のヒロインなのだから。