乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
【番外編】乙女ゲーム「????」ルート

【カイルルート】?周目のホルストにて

【番外編】?周目のホルストにて

 基本的に、カイル・ホルストという男は、周囲に対して軽薄な印象を抱かせる人間である。

 明るいブラウンの髪に、褐色の肌、そしてアメジストのような紫の瞳が印象的な整った顔は、異国の顔であることがすぐに判るものの、不思議と女性に人気を集めている。

 アルデウムの世界には各国に様々な髪色、瞳の色の人が住んでいるが、褐色の肌は珍しい。アーネスト国からもホルスト国からも離れた最西の島国に住む人々のみが褐色の肌をしている。

 まずは物珍しさで目を奪われ、その次に端正な顔立ち、そして極めつけに親しみやすい態度が彼の周りに女性をひきつける。

 しかし、召喚された聖女はと言えば、親しくはしてくれるものの、カイルにのぼせた様子を見せてこない。

「まあ、ただの処世術で優しくしてるだけだからいいんだけどさ」

 そうは呟くものの、どこか胸にひっかかりを覚えるカイルだが、魔王城を目指してホルストを通過する際に、そのイベントはやってくる。

「そういえば、次の街ってホルストの王都でしょう? やっぱりカイルは王城で家族に会ってくるの?」

 カイルはアーネスト国に長く逗留しているが、そもそもはホルスト国の第三王子である。むしろ聖女と第三王子の一行なのだから、王城に滞在するのが当然の流れだ。

「いや、陛下はお忙しいから、王城には行かないよ。馴染みの宿屋があるから、そこに泊ろう。宴会とか開かれても疲れるでしょ? カナエ様はさ」

 ヘラっと笑いながらカイルが言うのに、カナエは「そっかー」と軽く納得している。しかし、ミヒャエルは流さなかった。

「国に立ち入ったというのに、挨拶もなしでは礼儀に欠くんじゃないかい? 宴会は辞するとしても、伺わない訳にはいかないよ」

 そう言われ、結局カイルたちは王城に顔を出すことになったのである。

 王城につくなり、王との謁見が許されたが、王はただ一言告げただけだった。

「ごゆるりとお過ごしください、聖女よ」

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