乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
確かにカナエの言う通りだった。アレンは、このローブを見知らぬ人間の前で外すのが嫌だったからこそ、この旅の道中、洗濯ができなかったのだ。
実のところ彼は、意図的な地味人間なのである。しかし、彼の容姿や経歴と言えば全くもって地味ではない。
彼のただでさえ目立つ容姿の中でもひと際目を引く長い髪は、魔法のために伸ばしているに過ぎない。魔法師の身体の一部を切り取ったものは、魔法師が最も魔力を込めやすい媒体だ。だから、アレンの髪が長いのは有事の際の魔道具代わりなのである。にも関わらず、伸ばしたその髪の優美さ、その容姿の麗しさから、少年時代は邪なちょっかいをかけられることが多かった。
魔法師としての腕は、申し分ない。最年少に近い年齢で魔法師の資格を彼はとっている。何故最年少でないのかと言えば、目立つのを嫌がった彼が、最年少記録を更新しない年齢までその才能を抑えていたからに過ぎない。
ここのところ『アレンは目立たない男だ』という評価を受けているのは、ひとえに普段欠かさず身に着けている目くらましのローブのおかでである。
目くらましの効果を付与したローブを仕立ててからというもの、彼の生活はとても安定した。ローブを身に着けている限り、彼は目立つことなく、ちょっかいをかけられることなく、平和な暮らしを送ることができたのだ。
旅に出る前は、ローブの洗濯も出来たが、旅の道中ではいつ素顔を見られるか判らない。必然、アレンはローブの洗濯など出来なかった。
確かに汚れは酷い。洗濯もしたいとは思っていたのだから、カナエの申し出は渡りに舟である。カナエがどこまで察してくれたのかは判らないが、誰にも見られないようにしてくれるというのならそれに乗らない手はない。
「……破るなよ」
おずおずとローブを脱いで、アレンはカナエに渡す。途端に再び、アレンの容姿は本来の銀髪に戻った。
「うん! たらいとか借りてくるね!」
そう言って、カナエは部屋から出ると、すぐに湯を張ったたらいを持って戻ってきた。そしてアレンのローブを湯につけてじゃぶじゃぶと洗い始める。
実のところ彼は、意図的な地味人間なのである。しかし、彼の容姿や経歴と言えば全くもって地味ではない。
彼のただでさえ目立つ容姿の中でもひと際目を引く長い髪は、魔法のために伸ばしているに過ぎない。魔法師の身体の一部を切り取ったものは、魔法師が最も魔力を込めやすい媒体だ。だから、アレンの髪が長いのは有事の際の魔道具代わりなのである。にも関わらず、伸ばしたその髪の優美さ、その容姿の麗しさから、少年時代は邪なちょっかいをかけられることが多かった。
魔法師としての腕は、申し分ない。最年少に近い年齢で魔法師の資格を彼はとっている。何故最年少でないのかと言えば、目立つのを嫌がった彼が、最年少記録を更新しない年齢までその才能を抑えていたからに過ぎない。
ここのところ『アレンは目立たない男だ』という評価を受けているのは、ひとえに普段欠かさず身に着けている目くらましのローブのおかでである。
目くらましの効果を付与したローブを仕立ててからというもの、彼の生活はとても安定した。ローブを身に着けている限り、彼は目立つことなく、ちょっかいをかけられることなく、平和な暮らしを送ることができたのだ。
旅に出る前は、ローブの洗濯も出来たが、旅の道中ではいつ素顔を見られるか判らない。必然、アレンはローブの洗濯など出来なかった。
確かに汚れは酷い。洗濯もしたいとは思っていたのだから、カナエの申し出は渡りに舟である。カナエがどこまで察してくれたのかは判らないが、誰にも見られないようにしてくれるというのならそれに乗らない手はない。
「……破るなよ」
おずおずとローブを脱いで、アレンはカナエに渡す。途端に再び、アレンの容姿は本来の銀髪に戻った。
「うん! たらいとか借りてくるね!」
そう言って、カナエは部屋から出ると、すぐに湯を張ったたらいを持って戻ってきた。そしてアレンのローブを湯につけてじゃぶじゃぶと洗い始める。