乙女ゲームのメインヒーロー、なぜかヒロインから溺愛周回攻略されてます
思い返してみれば、カナエは私が『甘い王子様』の仮面を被るのを止めて以降、好きだと言わなくなった。私と結婚するための妃教育は、真面目に取り組んでいるようではあったが、想いを確かめあったと思っていたのは、私だけなのかもしれない。
「殿下」
不意にドアが開いて、カナエたちに私がここに居たのがバレてしまう。
「いや、 通りすがっただけだ。気にしないでくれ」
かろうじてそれだけ言うと、私はすぐにその場を立ち去る。王子ともあろうものが立ち聞きしていたのだとバレれば、面目が立たない。それに今カナエと顔を合わせたとして、どんな顔をしていいか判らなかった。
私は、最初にカナエを失った時、カナエを忘れる程に狂ってしまった。それにも関わらず、乙女ゲームのヒロインとしてやってきたカナエに対して、いつの間にかまた恋に落ちていた。
きっと、何度でも私はカナエに恋するのだろう。
けれどカナエはそうではないのかもしれない。ただ『甘く優しい王子様』の仮面を被った私だけを好きになってくれたのかもしれない。アルデウムの世界に残りたいと告げた時ですら、「もっとヒーローらしく」と、乙女ゲームの役割を求めてきたのだ。
思い返してみれば、ゲームになる前の一番初めの旅の時、私は度々乙女ゲームのヒーローごっこをしていた。カナエが私に対して赤面して見せたのは、いつもごっこ遊びをしている時だけだったのではないだろうか。
「一人で舞い上がって、馬鹿みたいだ、私は……」
自分の執務室に足早に戻って、深く椅子に腰かける。
「私は、好かれてなどいなかったのだな……」
呟いた言葉が、やけに胸に刺さった。人柄も何も知らぬうちから好きだと告げてきていた彼女は、一体私のどこを好いていてくれたというのだろう。ただの見た目、王子様の仮面が好きだったのだとすれば、私自身のことなど、微塵も好きではなかったに違いない。
決済すべき書類に目を通そうにも、頭に内容が入ってこなかった。ようやく挙式の日取りも決まったというのに、こんなタイミングで彼女の心が自分にないことを知ることになろうとは。
「殿下」
不意にドアが開いて、カナエたちに私がここに居たのがバレてしまう。
「いや、 通りすがっただけだ。気にしないでくれ」
かろうじてそれだけ言うと、私はすぐにその場を立ち去る。王子ともあろうものが立ち聞きしていたのだとバレれば、面目が立たない。それに今カナエと顔を合わせたとして、どんな顔をしていいか判らなかった。
私は、最初にカナエを失った時、カナエを忘れる程に狂ってしまった。それにも関わらず、乙女ゲームのヒロインとしてやってきたカナエに対して、いつの間にかまた恋に落ちていた。
きっと、何度でも私はカナエに恋するのだろう。
けれどカナエはそうではないのかもしれない。ただ『甘く優しい王子様』の仮面を被った私だけを好きになってくれたのかもしれない。アルデウムの世界に残りたいと告げた時ですら、「もっとヒーローらしく」と、乙女ゲームの役割を求めてきたのだ。
思い返してみれば、ゲームになる前の一番初めの旅の時、私は度々乙女ゲームのヒーローごっこをしていた。カナエが私に対して赤面して見せたのは、いつもごっこ遊びをしている時だけだったのではないだろうか。
「一人で舞い上がって、馬鹿みたいだ、私は……」
自分の執務室に足早に戻って、深く椅子に腰かける。
「私は、好かれてなどいなかったのだな……」
呟いた言葉が、やけに胸に刺さった。人柄も何も知らぬうちから好きだと告げてきていた彼女は、一体私のどこを好いていてくれたというのだろう。ただの見た目、王子様の仮面が好きだったのだとすれば、私自身のことなど、微塵も好きではなかったに違いない。
決済すべき書類に目を通そうにも、頭に内容が入ってこなかった。ようやく挙式の日取りも決まったというのに、こんなタイミングで彼女の心が自分にないことを知ることになろうとは。