メリーでハッピーなトゥルーエンドを
控えめながら強く告げると、彼はあっさりと首を縦に振る。
「別に構わねぇよ」
「ほ、本当?」
渋るか断られるかと思ったのに、意外なことにすんなりと引き受けてくれた。
驚くわたしに、ずいと顔を寄せてくる。
「ただし、本当に“見守る”ことしかできねぇぞ。あいつがどんな目に遭おうと」
たとえば、これまでのように郁実が命の危機に晒されるような危険な状況に陥っても、救ってくれることはないのだろう。
御影は悪魔であって、やっぱりわたしの味方じゃないから。
「分かってる。それなら……」
両手で包み込むようにして持っていた砂時計を差し出す。
「もし、わたしか郁実が命を落とすようなことがあったら……お願い」
御影は砂時計とわたしをしばらく見つめたあと、短く息をついて受け取った。
にやりといつもの強気な笑みを浮かべる。
「任せとけ。そのときは俺の出番だな」
放課後が近づくにつれて、どことなく油断ならない緊張を覚え始めていた。
知らない“今日”に飛び込むことになるから。
(断っておかなきゃ)
郁実に、一緒に帰れなくなったことを伝えないと。
罪悪感に苛まれるものの、不安はそれほどなかった。
わたしが離れても、御影がいてくれればとりあえずは安心できる。
鞄を手に郁実のもとへ向かおうとしたとき、あれ、と足が止まった。
郁実がいない。
訝しく思ってあたりを見回しても、教室内のどこにも姿が見えない。
こんなこと、いままでなかったのに。
(また……展開が変わった)
胸を掠めるた嫌な予感が、途端に重たく膨れ上がってきた。
既に何かが起きているにちがいない。
わたしの知らない何か、よくないことが。
「……っ」
慌てて教室を飛び出した。
ときどき駆け足になりながら廊下を進み、何度も呼んで彼の姿を探す。
状況はちがうけれど、何だかデジャヴだ。
こんなふうに“昨日”も放課後に動き回って、玲ちゃんの遺体を見つけた。
まさか“今日”も?
それとも、“今日”は郁実が……?
引き寄せられるように、気づいたらあの空き教室へと向かっていた。
胸騒ぎが止まない。
息切れしながら扉を開けたとき、信じられない光景が飛び込んできた。
「……え?」
重なったふたつの人影。
後方に寄せられた机の上に横たわる女子生徒は、間違いなく玲ちゃんだ。
背中から勢いよく倒れ込んだのか、きちんと並べられていたはずの机がずれている。
そして、そんな彼女の首に両手をあてがっているのは────郁実だった。