メリーでハッピーなトゥルーエンドを

 すっかりうろたえてしまい、支えようとしても叶わない。
 ぐったり力なく倒れた彼の肌はどんどん色をなくしていた。

 もう何度も見た絶望的な姿だ。

「……また、邪魔をするんだ。きみがどうして」

 呆気(あっけ)に取られていた様子の柊先輩が、冷ややかに郁実を見下ろして言った。

 郁実は虚ろな瞳に彼を捉えて、浅い呼吸の隙間で答える。

「同じ……でしょ」

 そう口にすると、苦しげに顔を歪めた。
 がっくりと床に伏せたきり動かなくなってしまう。

 弱々しく肩が上下していることで、辛うじて生きていることは分かった。
 だけど、もう時間の問題だろう。

 守れなかった。助けられなかった。
 “今日”もまた、結局────。

「御影……っ」

 きつく唇を噛み締め、その名を唱える。

 時間を巻き戻してもらわなきゃ、早く。
 こんな何もかもが狂った世界、壊して終わらせなきゃ。

「いるんでしょ、早く来て……!」

「……ったく、分かった分かった。いちいち泣くなよ」

 ふっとそばに気配が現れ、いつもみたく気だるげな御影が姿を見せた。
 まるで緊張感のない態度は場違いだけれど、いまばかりはなぜかほっとしてしまう。

「俺の出番だな。いや、今回は必要なさそうか」

 え、と顔を上げると、彼は柊先輩の方に目をやっていた。
 つられてそちらを向いてさらに驚く。

 彼の手にも、砂時計があった。

「そ、れ……」

 わたしのとは色がちがい、白の本体に青い薔薇が咲いている。
 ()え渡るような青色のそれは3輪残っていた。

「意地になっても仕方ないみたいだね。一旦リセットするよ。もう、これ以上“今日”に留まる意味もない」

 そう言うと、先輩は砂時計をひっくり返す。

 さらさらと流れ始める細かな砂。
 戸惑う間もなく、深い眠りに落ちるようにみるみる意識が遠のいていった────。
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