メリーでハッピーなトゥルーエンドを
◆第3章 ビターエンドは誰の嘘?
この気持ちに気づいてから、もう随分と時間が経ったように思う。
だけど、ずっと隠してきた。
関係が壊れるのが怖いという怖気もどこかにはあるけれど、それよりも何より、花菜を困らせたくないからだ。
僕たちは幼なじみ。
長らく一緒に過ごしてきて、どんなときも僕を尊重してくれる彼女を深く信頼している。
“好き”という感情がノイズになって欲しくない。
花菜にとって僕は幼なじみ以外の何ものでもないんだから、この想いには気づかれないようにしないと。
幼なじみとしてでもそばにいられれば、それで十分。
そう思っていた。
────ある日の放課後だった。
花菜が突然、命を落とした。
一緒に帰る途中、駅のホームで電車を待っていたときのこと。
彼女がいきなり線路に落ちて、そのまま消えた。
「花、菜……?」
呆然と騒ぎの渦中で立ち尽くした。
浴びた血飛沫が冷え始めても、緊急アナウンスを耳にしても、金縛りに遭ったまま動けない。
何が起きたのか分からなかった。
自ら飛び込んだなんてありえないし、だとしたら誰かに押された……?
いずれにしても、花菜は────。
(嘘だ)
追いつかないぐちゃぐちゃの感情と視界に飛び込んでくる血の色が混ざり合って、目が回りそうだった。
こんなばかなこと、ありえない。
信じられない。信じたくない。
「絶望、ってこういうことを言うんだろうな」
ふいにそんな声が耳に届き、はっと我に返る。
顔を上げると、止まった電車の上に見慣れない男が座っていた。
闇に沈んだみたいな黒い髪と翼。
飛び散った血をそのまま吸収したような赤い瞳。
膝を立てて悠々とこちらを見下ろし、鋭い八重歯を覗かせながら笑っている。
「なに……?」
明らかに異質な存在だった。
奇妙に思いながら周囲に視線を振り向けるものの、ますますありえない光景に晒される。
「え?」
誰もいない。
ついさっきまで集まっていた人だかりが消え、騒然としていたはずの空間は静まり返っていた。
「なあ、どう思う? そいつの死、不自然だよな。いきなり線路に落ちるなんて」
「何を……」
「けど、助けられたんじゃねぇか? おまえなら」