メリーでハッピーなトゥルーエンドを
「……いいよ、分かった。こうして教えてくれるだけでもありがたいと思うことにする」
「話が分かるな」
満足そうに頷く御影に背中を向け、もつれた頭の中を整理する。
考えるように腕を組みながら「でも」と呟いた。
「繰り返してることは分かったけど、解せない。そもそも何で繰り返してるんだろう」
僕が花菜の代わりに死んでいるということは、彼女の命は助かっているはず。
僕としても花菜を守れて本望だろうに、時間が巻き戻ってしまう理由が分からない。
僕のタイムリープじゃない、という御影の言葉がヒントなのだろうか?
「御影、きみの言葉で教えて欲しい。前にあった“今日”のこと。それなら構わないよね」
「ああ、いいぜ。一から教えてやるよ」
────そうして聞かされたのは、現実離れした“今日”の結末の数々。
あるときは駅のホームから落ちて、あるときは家が火事になり、あるときは何者かに刺されて、あるときは屋上から突き落とされて、花菜は死んだという。
そして、先に聞いていた通り僕も何度も死んでいた。
大型トラックに轢かれて、工事現場の鉄骨の下敷きになって、電車にはねられて……。
覚えていなくてもぞっとする。
だけど、ひときわ気を引かれたのは彼女が助かった日のことだった。
「花菜を庇って別の子が亡くなった……?」
その日は花菜でも僕でもなく、彼女が亡くなったらしい。
そしてそこに居合わせたのが、柊先輩と天使だとかいう得体の知れない存在。
「そうだ。あのとき死んだのは、カナじゃなくてレイ。そして、おまえじゃなくてそいつらが先に砂時計をひっくり返した」
「え……? そうするとどうなる?」
「あいつらの時間軸に閉じ込められる。死ななくてもおまえに記憶は残らなくなるし、おまえに渡した砂時計も効かなくなっちまう」
何だかややこしい話になってきた。
パラレルワールドだとしたら僕たちはその世界線に取り残されて、彼らだけが、分岐した別の“今日”に移動していくということだろうか。
その別の世界線の僕は記憶を引き継げないから、何も知らないまま花菜を失うことになっていただろう。
あるいは世界が一直線上にあるのなら、まるごとリセットされることになる。
その場合も僕は記憶を失って、彼らに都合のいいようにシナリオが書き換えられていたはずだ。
それをさせないために、御影も砂時計をひっくり返す必要があったのか。