メリーでハッピーなトゥルーエンドを

「……いいよ、分かった。こうして教えてくれるだけでもありがたいと思うことにする」

「話が分かるな」

 満足そうに頷く御影に背中を向け、もつれた頭の中を整理する。
 考えるように腕を組みながら「でも」と呟いた。

「繰り返してることは分かったけど、解せない。そもそも何で繰り返してるんだろう」

 僕が花菜の代わりに死んでいるということは、彼女の命は助かっているはず。
 僕としても花菜を守れて本望だろうに、時間が巻き戻ってしまう理由が分からない。

 僕のタイムリープじゃない、という御影の言葉がヒントなのだろうか?

「御影、きみの言葉で教えて欲しい。前にあった“今日”のこと。それなら構わないよね」

「ああ、いいぜ。一から教えてやるよ」

 ────そうして聞かされたのは、現実離れした“今日”の結末の数々。

 あるときは駅のホームから落ちて、あるときは家が火事になり、あるときは何者かに刺されて、あるときは屋上から突き落とされて、花菜は死んだという。

 そして、先に聞いていた通り僕も何度も死んでいた。

 大型トラックに轢かれて、工事現場の鉄骨の下敷きになって、電車にはねられて……。
 覚えていなくてもぞっとする。

 だけど、ひときわ気を引かれたのは彼女が助かった日のことだった。

「花菜を庇って別の子が亡くなった……?」

 その日は花菜でも僕でもなく、彼女が亡くなったらしい。
 そしてそこに居合わせたのが、柊先輩と天使だとかいう得体の知れない存在。

「そうだ。あのとき死んだのは、カナじゃなくてレイ。そして、おまえじゃなくてそいつらが先に砂時計をひっくり返した」

「え……? そうするとどうなる?」

「あいつらの時間軸に閉じ込められる。死ななくてもおまえに記憶は残らなくなるし、おまえに渡した砂時計も効かなくなっちまう」

 何だかややこしい話になってきた。

 パラレルワールドだとしたら僕たちはその世界線に取り残されて、彼らだけが、分岐した別の“今日”に移動していくということだろうか。

 その別の世界線の僕は記憶を引き継げないから、何も知らないまま花菜を失うことになっていただろう。

 あるいは世界が一直線上にあるのなら、まるごとリセットされることになる。
 その場合も僕は記憶を失って、彼らに都合のいいようにシナリオが書き換えられていたはずだ。

 それをさせないために、御影も砂時計をひっくり返す必要があったのか。
< 70 / 72 >

この作品をシェア

pagetop