御曹司社長の契約溺愛 シンデレラなプロポーズは、夜ごと甘く溶けて

エピローグ：愛の支配の完成形

あれから五年。神楽坂家には、蓮の「究極の被支配者」である娘、愛が加わり、その日常は、以前の契約結婚時代とは比べ物にならないほど、温かく、そして賑やかになっていた。

愛は、蓮譲りの聡明さと、琴音譲りの明るさを持ち、その存在自体が、神楽坂家の絶対的な光となっていた。蓮の執務室には、彼の完璧な経営計画書だけでなく、愛が描いた無数のクレヨン画が飾られている。

ある週末。タワーマンションのリビングで、蓮は愛に積み木で巨大な城を作ってやっていた。その姿は、以前の冷徹な社長とはかけ離れた、優しい父親の顔だ。
「パパ、ここはね、ママのお部屋なの！プリンセスルームだから、一番上ね！」

愛が指示を出すと、蓮は真剣な顔で積み木を積み上げた。
「承知した、愛。君の命令は、私の最優先事項だ。君の支配は、完璧に遂行される」

蓮は、五歳になる娘に対しても、変わらず「支配」という言葉を使う。しかし、その言葉には、限りない愛情と、溺愛が込められていた。

キッチンで夕食の準備をしていた琴音が、その様子を見て微笑んだ。
「蓮。相変わらずね。愛にまで『支配』なんて」
琴音がリビングに戻ると、蓮は立ち上がり、愛の城の前に立ちはだかった。

「琴音。この城は、君の安全と幸福を確保するための防衛線だ。そして、私は、この城の永遠の守護者だ」
蓮はそう言いながら、琴音を抱き寄せた。

「君という支配者が、私に与えた最高の愛の形が、この子だ。君たちの幸福が、私の究極の合理的判断だ」
蓮の独占欲は、今や、家族全員を包み込む、強固で温かい献身の愛へと進化していた。

彼は、愛を言葉で語ることに抵抗はなくなったが、彼の行動原理は、依然として「愛するものを守るための絶対的な支配」という、彼独自のロジックに基づいていた。

夜。愛が眠りについた後、二人は寝室のテラスで、夜景を眺めていた。

蓮は、静かに琴音を後ろから抱き締め、首筋にキスをした。
「もし、あの『契約』だけの時期に、愛が生まれていたら……私は、もっと早くに、愛の非合理性に屈服していた。そして、君と、この子の存在を、私の最も厳重に隠された支配対象として、外界から切り離していただろう」

蓮は、そっと琴音の指輪を撫でた。

「だが、結果は同じだ。愛は、私を支配する君の最強の武器だ。そして、君は、私を愛という名の枷で、永遠に縛りつけた。私は、君の愛の永遠の捕虜だ」

蓮は、琴音の耳元で、静かに、そして熱を込めて囁いた。
「私の人生の最大の幸福は、君たち家族を支配し、そして献身することだ。契約から始まった我々の愛は、今、完全な成就を迎えている」

琴音は、蓮の抱擁の中で、彼の愛のすべてを感じた。それは、冷徹な支配者の独占欲から生まれた、世界で最も温かい愛だった。
「愛しているわ、蓮。あなたの支配は、私にとって最高の幸福よ」

二人は、夜景の中で深くキスを交わした。契約結婚という異様な形で始まった二人の物語は、愛と支配、献身と服従が織りなす、永遠に続く幸福な家族の物語として、完成した。
（完）