不埒な先生のいびつな溺愛【番外編集】
しかし、どうやら今日は巡り会えないらしい。
すぐに室内に入れるだろうと思ってワイシャツにリボンを結んだだけの薄着だった私は、肌寒さがやがて心にまで浸透してきて、鞄から白い指定のセーターを出した。
それを羽織り、駅前のコミュニケーションセンターへ移動しようとやっと決意し、立ち上がる。
通りへ出ようと、花壇に沿って銅像の背面へと歩みを進めた。
そのときやっと、銅像を挟んだ向こう側の花壇に、誰かが座っていると気づいた。
「もしかして……久遠くん?」
私と同じセーターを着た彼は、声をかけるとすぐにこちらを振り返る。
彼も短く「え」とつぶやいた。
「……秋原」
「全然気づかなかった! 今日休館日なんだって。いつ来たの?」
抑えきれないうれしさが声色に漏れだす。
会えた。はしゃぐ私とは違って久遠くんは黙っていて、ただ座ったまま、目を開いて、駆け寄ってくる私を見上げている。
しばらくして、彼は目を逸らした。
「い、いまきた。……今」