不埒な先生のいびつな溺愛【番外編集】
「そっか。じゃあ、久遠くんは帰っちゃうんだね」

寂しくて、もう一度だけ聞いてみた。答えはきっと同じだろう。

「コミュニケーションセンターは他校のやつらがうるさくて集中できない。……家の方がいい」

「うん。わかった」

ここまで言われては完全に脈なしだとわかり、連れて行くことはあきらめた。
せめて通りまで一緒に出たくて、「じゃあ、あっちに行ってからバイバイしようか」と立ち上がり、久遠くんの袖を引っ張る。

しかし彼は立とうとしない。
私に引っ張られた腕を上げてはくれるものの、その姿勢で動かなかった。

「久遠くん?」

寒いのだろうか。
伏し目なため顔がよく見えないけど、耳が赤く染まっている。

「……秋原はあそこで勉強できるのか」

意図がわからない質問をされる。
集中できない環境で勉強したって意味がないと忠告されているのだろうか。
そんなことを言われても、休館日なのだからしかたないのに。
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