不埒な先生のいびつな溺愛【番外編集】
「うちはお母さんのテレビの音がうるさいし、勉強してるのに部屋に掃除機かけに来るし、本当に邪魔ばっかりしてくるの。家はダメだからコミュニケーションセンター行くしかなくて」

「……俺の家は、誰もいない」

それは何度も聞いた。
いい加減首をかしげたくなったが、彼の言葉の意味に気づいた瞬間、私は「へ」と間の抜けた声が出た。

まさか。そんな。
もしかして、そういう意味?

「わ、私もお邪魔していいかなぁ」

誘ってくれたんだよね、と素直に疑問をぶつけたら逃げられてしまう気がして、私から申し出てみた。
しかし勘違いだったらと怖くなってすぐに「なんちゃって」と付け加え、ひきつった笑みを浮かべてみせる。

久遠くんは長い脚を余らせて座っていた姿勢から、ようやく立ち上がった。
相対した彼の表情は、儚げに揺れながら、季節は春のように。

「秋原なら、いい」

霞むように笑った。



◆休館日のできごと 完
< 6 / 26 >

この作品をシェア

pagetop