不埒な先生のいびつな溺愛【番外編集】
2.好きで好きでたまらない夜
美和子を抱いた。
まだ夢から覚めないでいる。
作家と編集として再会したあの日。
『お久しぶりです。久遠先生』
事務的な言葉をかけられ、俺は絶望した。
俺の中の美和子は高校生で止まっているのに、急に髪が茶色くなったことや、控えめだが香水の匂いがしたことや、仕草が大人っぽくなったこと。
すべてに、俺だけが取り残されていたと実感した。
その事実に俺はたしかに絶望した。
あれはまぎれもなく絶望だったはずだ。
でも、変わってしまった今の美和子が、どうしようもなく魅惑的で、前よりもっと手が届きそうになくて、それなのに担当として俺の家に来て、隣に座り、笑いかけてくれる。
俺が十二年間で思い描いた美和子には、キスをして、押し倒して、好き放題に口をつけ、何度も何度も体の奥までかき回すことができたのに、実物の茶色い髪の美和子にはなにもできなかった。
いつも隣にいるだけで胸が張り裂けそうだった。
好きで好きでたまらなくて、知らない女になってしまったことに戸惑っているはずなのに、ふと昔の話題を出されるたびに、その夜はもう、眠れないほど胸が震えた。