明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
「……っ!」

私は驚いて手を引いてしまった。

「ふふ。男女の恋は、まだ慣れていないか。」

そう言うと惇様は、私を抱き寄せた。

「気にすることはない。これからゆっくり、俺に慣れればいい。」

「……はい。」

そして惇様は、部屋を出て行ってしまった。

手に口づけをされたぐらいで、動揺するなんて。

私は本当にこれから、やっていけるのだろうか。


やがて夜がやってきて、私は一人食堂に連れて来られた。

「あの、旦那様と奥様は?」

「もう夕食は摂られました。」

「そうですか。」

要するに妾とは、一緒に夕飯を食べられないということだろうか。

そして一人で食べる食事は、なんだか寂しい気がした。

しばらくして、お風呂の準備ができたと言われた。

夜遅い時間。きっと二人はもう、お風呂に入った後なのだろう。

暮らしていた家には、小さな湯船があった。
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