明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
そこからは、母の笑い声や弟の話し声も聞こえた。

もうそんな声も、聞こえないのだろう。

浴室に入ると、大きな湯船にびっくりした。

一度に10人は入れるだろうか。

やはりお金持ちの家は、すごいなぁと思った。

石鹸で体を洗っていると、戸の影から声が聞こえた。

「珠緒。俺も一緒に入っていいか。」

「惇様?」

私は慌てて布で胸元を隠した。

「ど、どうぞ。」

そう言うと、浴室の戸はゆっくりと開いた。

そこには裸で、前だけを布で隠している旦那様がいた。

「ゆっくりしているところをすまん。」

「いいえ。ここは惇様の浴室ですから。」

私はそう言うと、慌てて桶で体の泡を流し、浴室から出ようとした。

「どこへ行く?」

ふと旦那様に、後ろから抱きしめられた。

「一緒に入ろうと言っただろ。それにまだ十分、温まっていないじゃないか。」
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