明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
「後で、ボタンを着けておきます。」

そう言うと旦那様は笑った。

「珠緒は、俺の肌を見ても動じないのか。」

「……もう見慣れました。」

「あははは。」

ベスト着て上着を着た旦那様は、私の頬に口づけをした。

「さすがは閨を共にしているだけある。」

かぁーっと赤くなると、旦那様はクスクス笑った。

「では、行ってくる。」

「いってらっしゃいませ。」

旦那様が玄関を出ると使用人の一人が近づいてきた。

「珠緒様、シャツのボタンは私が……」

「いいえ。私に、着けさせて下さい。」

なぜか旦那様の匂いがするシャツを、誰にも触れさせたくなかった。

部屋に戻ると、実家から持ってきた荷物の中に、裁縫道具があった。

よくこれで弟の服も縫ってあげていた。

私は針と糸を用意すると、ボタンをシャツに縫い付けた。

「旦那様……」

まるで旦那様に抱かれているような気分だった。
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