明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛
「一か月半か。微妙だな。」

私は本当にここに来てよかったのかなと思った。

でも看護学校で産婦人科があるのは、帝大だって教わったし。

「うーん。ここはお春さんの出番かな。お春さん!」

医師がそう言うと、奥から杖をついたお婆さんがやってきた。

「なんじゃいね。」

「月経が止まって1か月半。妊娠してるか診て欲しいって。」

「かーっ!お主はまだ触診で分からないのかね!」

そう言うとお春さんというお婆さんは、私をカッ見た。

「妊娠してるね。」

私はガクッと膝を折った。

「診ないで分かるんですか。」

「肌ツヤ違う。乳房も張っている。」

医師はじーっと私を見る。

「なるほど。お春さんぐらいになると、肌ツヤで妊娠が分かるのか。念の為に脈診してみますね。」

そう言って医師は脈を取った。

「はぁー。俺にはまだまだ未知の世界だな。」

「経験じゃ、経験。」

お春さんは、医師を杖で叩いた。
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