あなたに殺された聖女の私
 カイレムも当たり障りのない言葉を選んで口にする。
「そう。それならいいのだけれど……。ただ、変な噂を聞いたものだから……」
「噂、ですか?」
 侍女たちは離れた場所で控えており、他には誰もいない。だというのに、エヴァリーナは小さく首を降って周囲を確認してから、カイレムに顔を寄せてきた。
「えぇ。あなたたちのパーティーに、ユリセナがいたという話を耳にしたのよ? あなた、ユリセナに……リトス侯爵家に招待状を送ったの?」
「何を、言っているのですか? 彼女は……それに、リトス侯爵も領地に戻ったと……」
「えぇ……そうよね……。彼女は死んだはずだもの……」
 なぜ王妃はユリセナが死んだと断定するのか。ユリセナは姿を消しただけ。今のところ、生死不明、行方不明者として扱われている。
 いまだにユリセナを聖女と尊ぶ者もおり、彼女の生死については触れてはならない話なのだ。
「母上、王妃ともあろう者が、そういったことを口にするものではありませんよ」
 カイレムがたしなめたところで、エヴァリーナの紺色の瞳が恐怖に染まる。
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