あなたに殺された聖女の私
「兄妹なのだからいいでしょう? それにきちんと言ってきたもの。お兄様のところに行ってくるって」 
 カイレムは苦笑するしかない。
 五つ下のリリシアは、イブリンを慕っている。だからユリセナが姿を消し、イブリンが婚約者として名前があがったときは、喜んだものだ。
 むしろユリセナを嫌っていた。リリシアに言わせれば「口うるさい」と。些細な行動を咎められると。
「それで、お義姉様の様子は?」
「あぁ。いろいろあったから、疲れてしまったのだろう。今はゆっくり身体を休ませるときだと判断した」
 まだ諸国の関係者の幾人かは王宮内にとどまっているが、それは国王や他の重鎮たちが対応している。
 王太子夫妻が愛を深めている時間を、邪魔しようとする野暮な者はいない。
 カイレムはダリオンに目配せし、侍従にお茶を用意するよう頼んだ。
「そうなのですね。お兄様も、ゆっくり休めばいいのに」
「そういう性分なのだから、仕方ない。それにイブも……私がいないほうが気を使わなくてすむだろう」
 相手を求めるときと、一人になりたいときがある。
 侍従がお茶とお菓子を用意し、テーブルの上に並べた。
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